2006年 01月 08日 ( 1 )

2006年 01月 08日
オカン
僕のいままでの人生のなかで大切な本は幾つかある。

そのひとつがユン チアン著の「ワイルドスワン」である。
文化大革命にいたるまでの近代中国社会を駆け抜けた著者親子3代にわたる壮絶な人生を綴った本である。
矛盾と荒廃と絶望とそこにある親子の愛情をリアルに描ききったノンフィクションの名作である。
纏足を強いられた最後の世代の祖母、共産党の影響で女性として労働を強いられる母、UKへの留学をかなえる著者。
健気で直向きな母と著者との、イデオロギーの縛りの中からでも逞しく育まれる愛情の絆の存在に僕は号泣した。
最近、ユン チアン氏は新作「マオ—誰も知らなかった毛沢東」を発表したようである。
是非とも読んでみたいと思っている。
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さて今日ご紹介したいのは、もはやベストセラーとなっているリリーフランキー著「東京タワー」である。
多才なクリエーターだと認知していた僕であったが、
こんな素晴らしい文章を書かれる方だとは失礼ながらまったく知らなかった。
昨今は、若くして直木賞、芥川賞を獲得する才能が次々出てきている。
もちろん全て僕も読んだ訳じゃないけど、皆さん洗練されて非常に計算された稚拙な文章がそこにはある。
カロリーは適度に低くて、極めて妙に住み心地のイイ世界が繰り広げられる。
それとは裏腹にリリーフランキー氏の文章はローコードしか知らない叫び続けるパンクバンドのようだ。
でもそのやんちゃな文体が凄まじく人間味を醸し出していて、そこから発する説得力は凄い。
オカンとオトンと著者との風景がリアルに綴られつづけ、そして最後はあまりにも美しすぎる涙を見せてくれる。
なんかコジャレタ表層的な日本語表現に飽きていませんか??

もちろんオカンにはお会いしたことはないけれど、いつのまにか僕の中にはリリーフランキー氏のオカンがいた。
優しくて愛情一杯で、一生懸命不器用に生きて、そして見事な著者と名コンビぶりのオカンが。
そして知らぬ間に、自然に僕の今は亡きオカンと重なっていた。
こんなに美しくて切ないマザコンストーリーがあると思っていなかった。
オカンを慕い、愛し、そして号泣し看取ったリリーフランキー氏は自然に格好良かった。

最後の約50ページは本当に号泣しながら読んだ。
今僕は首都高を運転して視界に東京タワーが入ってくると泣いてしまうかもしれない。

「ワイルドスワン」も「東京タワー」も素晴らしきオカンのお話しである。
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by kkmelmo | 2006-01-08 21:54 | amusement